高知新聞社会福祉事業団 軽費老人ホームA型 軽費老人ホームA型 あかねの里

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掲載日:2017年9月20日

101回目も必ず逃げて


 今月9月は「防災月間」で、全国各地で災害に備える運動が展開されています。防災は自然災害に備えるものと思っていましたが、最近は不審者やテロ、ミサイルなども含まれるようになってきて、考えさせられるものがあります。そもそも防災月間は、1923年(大正12年)9月1日に発生、190万人余りが被災した関東大震災を忘れずに、防災意識を高めていこうと1日を「防災の日」とし、合わせて9月中に幅広い運動を繰り広げていこうと制定されました。

 私たちの施設でも今日20日、地震の発生に伴い火災が起きたとの想定で消防防災訓練を行いました。訓練前には毎回参加してくれる消防設備の業者さんも朝早くから出動し、スプリンクラーや火災報知機、避難誘導灯、消火器などすべてを点検してくれました。特に感謝したいことは、火災の発生個所を点示、防煙シャッター作動の有無を示す防災監視盤や消防へ状況を通報する火災通報装置の使い方を職員一人一人に教えてくれたことです。これらの機器は事務員の1人が操作しているのですが、「職員全員が知っていたほうがいい」と一昨年から時間を割いてもらい教室を開いているのです。しかし、教えられてもしばらく経ったら忘れており、このような機会に再度思い出す、その繰り返しが大切かと思います。

 頭に入りにくいのは利用者も同じです。訓練は奇数月、1年間に6回行っていますが、同じ失敗はあります。避難しやすいような靴の着用、避難後の集合場所での並び、避難が長期化することを考えて上着着用などは不十分で、講評での指摘に「あぁ、そうだった」「ついそのままの格好で」との反省があります。中には避難経路を勘違いし遅れた方もいました。成果が見られたのは、煙にまかれないようタオル持参、階段では急ぐことなく手すりを頼りにすることなどがほぼ徹底されたことです。訓練後の炊き出しは、米や野菜などの素材をポリエチレンの袋に入れ、熱湯の中で25分ほどゆでるもので、被災現場などで見る大きな鍋での大量調理とは異なっていました。レシピは親しくしている高齢者施設の施設長さんからいただきました。簡単な割にはおいしく、冷蔵庫の中の食料と米とで熱湯があればたやすくできると感じました。ちなみにしょう油や味噌など普通に家庭にある調味料も駆使すれば、いろいろな味も楽しめそうです。

 東日本大震災発生してから早くも6年6カ月過ぎました。遠く離れた高知にいると、大きかった天災もいつの間にか忘れ去られてしまいそうです。訓練にマンネリを感じるときがあるからです。「地震が来るのはまだ先」「来てもさほどの被害はない」との気持ちがどこかにあるようです。度重なる防災訓練による「疲れ」もあり、警告も「オオカミ少年」的に感じることもあるかもしれません。しかし、天災を予測できる人知はまだないのです。

 大震災に遭遇した人々が示唆に富む言葉を残しています。岩手県釜石市に建立された津波記憶石に刻み込まれた地元の当時中学2年生だった女子生徒の警句もその一つです。「100回逃げて 100回来なくても 101回目も必ず逃げて」。極めて分かりやすい、単純な、当たり前の言葉です。それでいて実に心に響きます。心を打つのは防災意識にもやや緩みが見えてきたと感じるからです。

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