高知新聞社会福祉事業団 軽費老人ホームA型 軽費老人ホームA型 あかねの里

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掲載日:2017年10月18日

「こども」「子ども」「子供」

 施設のホームページに「あかねのニコニコ日記」があります。先だっては「保育園の子供さんにプレゼント作り」と題して、この10月下旬に施設を訪れる園児へのお土産作りにいそしむ利用者の風景をアップしました。ところが、「『子供』との表記は『子ども』ではないのですか」との電話をいただきました。子供も許されるのではないかとの見解をお伝えしましたが、「こども」か「子ども」か「子供」かは日本語論争の一つでもあります。

 5月5日は「こどもの日」(1948年制定)と表記しますが、「子どもの権利条約」(1990年発効)、そして常用漢字表(1923年発表)には「子」も「供」も含まれ、従って「子供」となり、3種の表記に分かれます。いずれも間違いでなく、すべて正解です。そして、どれも法律などに則って制定されたもので、それなりの理由はあります。「こどもの日」の表記については、制定されたころ既に常用漢字に「子」「供」があったのにかかわらず「こども」の表記が一般的だったこと(条文も「こども」となっています)、また小さな子どもにも分かりやすく、親しみが持てることなどの理由からのようです。

 漢字でも書けるものを仮名に替える「交ぜ書き」の一つの例が「子ども」です。一般的には常用漢字にない表外漢字が熟語に含まれる場合に表外漢字を仮名に替える例が多いようです。「愛きょう」「がい骨」「覚せい剤」などがあります。では表外漢字が含まれていないのになぜ「子ども」? しかも1973年の内閣訓令は「子供」と漢字表記を明記しているのに。「供」という漢字には「つき従って行く人、従者」などの意味があることから、「子供は大人のお供をする」とのイメージを起こし、人権を損なう差別的な表現だとの指摘があり、さらに漢字だけよりも柔らかい印象が得られるとの意見がありました。また、すべて仮名にすると字面からして分かりにくく、公文書に利用するにしては軽い感じがするなどの見解も出され、折衷案の「子ども」が生まれたようです。「子どもの権利条約」の発効もそのような権利意識が高まった時代背景があったのでしょう。

 あらためて「子供」の使用が広がったのは2013年6月、文部科学省が公用文書で漢字に統一してからです。文科省は子どもの「ども」は複数形として古くから使われ、江戸時代に「供」が当て字として使われるようになったとし、「供」に否定的な意味はないとの意向を示しました。また、交ぜ書きが言葉の意味を把握しにくい、ルビを振る印刷技術も向上したなど社会的要因も後押ししました。ただ、一般社会での使用については制限していません。言葉の使用については他にも論議を巻き起こしています。例えば、「障害者」「障碍者」「障がい者」で、厚生労働省は協議を重ねていますが、まだ結論は出ません。いずれも人の尊厳を重んじる考えから始まった訳で、このような論争を通して人権思想が深まって行くことを期待します。

 「子供」を使用する文科省の見解発表から4年、「子ども」の使用を教えられ、納得し、慣れ親しんできた人々の中には「子供」にまだ違和感を持ち、抵抗がある人もいます。言葉が国民に幅広く定着するまでは10年刻みの年月は要するでしょう。支障がない限り、「子ども」派がかなり少なくなるまでは子どもの表記を用いたいと思います。

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