高知新聞社会福祉事業団 軽費老人ホームA型 軽費老人ホームA型 あかねの里

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掲載日:2017年11月5日

男性も笑うと長生き

 「七つ 長野の善光寺 八つ 谷中の奥寺で竹の柱に萱の屋根、手鍋下げてもわしゃいとやせぬ。信州信濃の新そばよりも、あたしゃあなたのそばがよい。あなた百までわしゃ九十九まで、共にシラミのたかるまで」と流れるような口上。高知の寅さんこと、間六口(はざま・むくち)さん(71)のバナナの啖呵(たんか)売りに爆笑、爆笑、爆笑…。私たちの施設では毎年11月3日の「文化の日」にお祭りを開いており、そのひとコマです。芸名の姓は出身地の四万十市間から、名は無口ならぬ六つの口で、おしゃべりが人6倍との由来です。NHKでは「老いを笑いで吹き飛ばす老漫談家」とも紹介されましたが、ハローワークの所長を早期退職したのはできるだけ多くの福祉施設を訪問、笑いを届けたいとの思いからとも言われています。

 公演後、間さんは「男性は女性よりも寿命が6年ほど短いのはなぜでしょうか」と質問を投げかけ、「男性はあまり笑わないからです。笑うと免疫力が高くなるなど笑いの効果は医学的にも証明されているのですが」と自答しました。最初の観客は多くが女性、次はほぼ男性と、同じ内容で1日に2回公演することもあるようです。「女性に大受けの話でも男性はさほど笑わない、笑っても静かに笑う程度、いや、笑うのを遠慮し、こらえている感じがすることもある」と言います。

 なぜ、男性は笑わないのでしょうか。間さんは「すべてではないのですが、サラリーマン、しかも高い地位を得た方にそんな傾向がありますね」と続けました。地位が高くなると自己規制することも多いことから笑うという感情もセーブする、笑うと威厳がなくなり苦虫をつぶした顔の方が偉い感じがする、男は人前で笑ってはいけないなどの教育も過去にはあった―などの諸説を聞くと、会社人生が長かった私は説得力があると感じ、思わず笑いが込み上げます。そんな建て前の生活が長年続いていると本音を出しにくくなる。定年退職後に新たな人生を挑戦しようとしても心が開かず、裸の自分をさらせない。その一例が、生きがいつくりの会などでの自己紹介で、さほど役立たない過去の経歴を披露することらしい。今後どのようなことをやりたいのか夢を語るのが一番良いのですが、「いまさら自己の気持ちを語るなんて」との照れが制御するのです、と展開されると笑いは大きくなります。

 笑いは家族論まで広がっていきました。「笑いは多くの人と共有したほうが高まり、深まり、笑いの場にいた人同士は親密になれます」と主張します。以前は祖父母から孫まで7、8人はいる大家族で、家族の誰かがざれ言を飛ばすと、笑いが波紋のように広がり、家族がさらに一体化、家族数が多くなるほど笑いのエコーは広がると強調します。60人が生活する私たちの施設でも時々、どこからともなくドッと笑いが湧き起こりますから、これもりっぱな大家族でしょう。独り暮らしだと? 漫画やテレビを見て笑うくらいのもので、笑いは伝染しようもありません。夫婦二人だったらどう? 妻の言動には夫は楽しく笑うそうですが、夫の言動は妻にさほど受けないようです。ウーン、これは微苦笑です。

 間さんは「1日に1回は笑いましょう。800回笑うと、つまり2年余り後には誰と会ってもにこやかになれます」と結んでくれました。

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