高知新聞社会福祉事業団 軽費老人ホームA型 軽費老人ホームA型 あかねの里

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掲載日:2017年11月11日

もう飲めんばー

 
 今日はどのような仕事をこなすか、予定表や前年度の報告、記録を調べ、またヒントに新聞、インターネットに当たり、日程表にメモすることから一日が始まります。ネット検索での「今日はどんな日」などもいろいろと参考になり、医療・福祉に関しては「肢体不自由児愛護の日」が見つかりました。1953年から始まり、11月10日から12月10日までの1か月間を「手足の不自由な子どもを育てる運動」期間として、肢体不自由児が描いた絵を載せた「友情絵はがき「愛の絵はがき」の配布などが行われます。

 「断酒宣言の日」は高知市で1963年11月10日、全日本断酒連盟の結成記念大会が開かれたことを記念したものです。初代の会長が香美市香北町出身で労働運動から転身した松村春繁さん(1903‐1970)、アルコール依存症患者の自助グループ「高知県断酒新生会」を1958年に設立し、断酒運動を全国に広め医療面で支えたのが下司孝麿医師(1914‐2011)でした。また、11月のNovemberを「もう飲めんばー」、前日10日を「酒止(十)まる」とした語呂合せも、高知ならではの「せっかくやるのなら愉快に楽しく」とのお祭りムードで良いですね。

 私たちの施設の目指すものは大きく二つ、利用者の健康と生きがいつくりで、取り扱いが難しいのが飲酒と喫煙です。この悩みは施設共通のもののようで会合などではよく話題に上ります。私たちの施設は身辺自立した方が入居していますから、個人の嗜好品の色合いが余計に強く周りに迷惑をかけなければ、との判断が働くようです。多くの病気の原因に飲酒・喫煙が挙げられ、受動喫煙防止が叫ばれるようになったことは職員にとって渡りに船で、建物の外だけでの喫煙としています。お酒は施設主催の行事の折、その人に適合するだけの量を提供、自室での独り酒は慎むよう申し入れています。それで利用者の頭の中では「分かっているけど」となるのですが、長年の習慣が「やめられない」との結果を招いています。

 現場を知らない私は「酒やたばこを取り上げたら」と乱暴な発言を職員にするのですが、酒やたばこを没収したら楽しみが減り、施設が目指していることに逆行するのかなと自問します。「これが家(自宅)だったら何も言われないのに」とか「酒飲んで(たばこ吸って)死んでも後悔することはない」などとの言葉は半ば真意が見え、私の気持ちはぐらつきます。また、利用者との距離が近い職員は協調を図らねばなりませんから、言葉には慎重さが求められます。少し脱線しますが、私がやや言い過ぎても利用者は許してくれているのか、その後も恬淡としています。ところが、職員の言動は心に残るのか「あの時は」と繰り返されます。日ごろの交わりの濃淡の差とともに私は無視されているきらいがあるかもしれません。

 喫煙は飲酒より習慣性があるのか、今は深酒の人はいませんが、喫煙の方はまだ数名います。禁煙のきっかけは死を招きかねない大病で、何とか節煙をとの職員の努力はまださほどの成果を見せていません。それでもやんわりと説得は続きます。根競べです。「病魔に負けて七転八倒の苦しみを味わうから」「施設の仲良しよりも早く死ぬでぇ」などと私は嫌がらせで後方支援しています。

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