高知新聞社会福祉事業団 軽費老人ホームA型 軽費老人ホームA型 あかねの里

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掲載日:2017年11月30日

終活セミナー


 何事も準備は大切だと誰もが分かっています。会議の司会を任された場合、円滑に進行させるため直前まで方法を練ります。子どもの運動会があるなら、弁当は少しでも凝ったものをと量販店に買い出しに走ります。結婚となれば、長い期間を要し披露宴、新しい生活への備えをこなします。ところが、終活への着手、準備はなかなか進みません。「しなくてはならない」と分かっていても、「まだ時間がある」「いずれそのうち」とついずるずると引き延ばしがちです。施設で主催しようにも中には「死を扱うのははばかれる」などと滞りがちです。ところが、「尊厳死とはどんなことか」「どんな病気も緩和ケアは受けられるのか」「遺言状の書き方はどうするか」などとの質問がこのところ寄せられるようになりました。

 利用者に答えるためいろいろ勉強していますが、まったく基礎知識のない身にはあれこれと結構大変です。そして、調べているうちに我が身を振り返り、「まだ早い。いずれそのうち」との考えでは遅い。自分が希望していること、自分ができることを今の内にできるだけ早くまとめ、家族に伝えなくてはと考えるようになりました。終末期の医療・介護、死亡時の手続き、葬儀、埋葬、遺品の整理、遺産相続が大きな終活でしょう。務めに必要な資金はある程度は蓄え、遺品は徐々に減らし形見分けを残し、遺産の分配は弁護士に相談したい。死亡時の手続きもいろいろな機関に分かれるが、遺族がそれなりこなしてくれそう。

 ここまでは考えることが出来るとしても、病気の回復の見込みがなく死期が近づいてきた終末期の医療・介護となると、遺産相続のように法律が整理、整備されておらず(2005年に発足した衆参両院議員で構成の「終末期における本人意思の尊重を考える議員連盟」は法案をいまだに提出できていない)、本人の意思がどこまで尊重されるか心もとない状況です。いや、その前に「食事も取れない。意識もない。呼吸も困難」など終末期の状態を想像することは難しく、また、医療の知識をさほど持ち合わせていないこともあって、「どうするか」との意思表明する材料がそろっていないことが実情です。

 請われるままに自らの勉強を兼ねて先週、終末期医療についての「終活セミナー」を地域の方も交えて施設で開きました。皆さんが望むのは老衰死です。「大往生」「ピンピンコロリ」とも言われ長寿の象徴ですが、老衰死は死因別死亡数で7%にしか過ぎません。老衰死は「眠るように亡くなる」「苦しまずに死亡する」中には「むしろ快楽の境地で死去する」などの説があります。しかし、死因のほとんどが苦痛も伴う病死です。治療に伴う痛みを和らげるケアも盛んに行なわれています。一方、命を長らえるための延命治療での痛みもあります。医療の素人ですから緩和ケアや延命治療については、ネットに書いてある程度のことを務めて簡単に、そして平明に話し、リビングウィル(意思表示書)に移りました。

 誰にでも分かるようなことを話したつもりですが、「分からなかった」との意見もありました。医学用語は誤解も承知でかみ砕いたり、物に例えたり工夫しましたが、伝わらなかったようです。身辺自立の元気な方ばかりですから時間はあります。医師の講演もお願いし、リビングウィルまで漕ぎ着けるよう巻き返し、繰り返しの勉強会を続けたいと考えます。

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