高知新聞社会福祉事業団 軽費老人ホームA型 軽費老人ホームA型 あかねの里

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掲載日:2017年12月1日

調理をめぐる闘い

 大根炊く、雑炊、みかん、葱、根深汁、冬菜、白菜、干菜、蕪、納豆汁、粕汁、闇汁、のっぺい汁、寄鍋、鍋焼、おでん、焼き芋、湯豆腐、夜鷹蕎麦、蕎麦湯、葛湯、熱かん、玉子酒、生姜酒、薬食い、山鯨、狸汁、鯨汁、ふぐ、あんこう、まぐろ、たら、ぶり、うるめいわし、塩鮭、もち、みそか蕎麦。

 12月、師走にふさわしい料理の季語数々。見ているだけでも体も心も温まりそう。寒さで震えた一日、仕事を終えての夕げ、家族がいれば、友がいれば風呂吹き大根や根深汁、寄せ鍋です。熱かんを互いに酌み交わすと心と心が近くなり、風邪をひいたら玉子酒です。子どもはこたつでみかんを食べ、大みそかには「この一年ご苦労さま」とそばで年を越します。

 月初めは調理の皆さんの話題です。まずは料理の横に添えられた俳句や川柳。できるだけおいしくたべていただこうと料理に合わせた俳句や川柳をネットなどで調べ、時にはへたも顧みず自作をこのところ掲げています。今日のお昼の献立はチンジャオロース、白菜の煮びたし、大根の酢の物、それにデザートは柿でした。そこで、「黒土に 太く真っ白 冬大根(フータ)」「風呂敷を ほどけば柿の ころげけり(正岡子規)」の2句が並びました。どうですか? 食欲がわいてきましたか? おいしく食べられますよね。 

 施設では利用者の食事の前に栄養士らに「検食」が国の基準で義務付けられています。栄養面・衛生面・嗜好面から検査するために試食するものとありますが、わが栄養士はそれだけではありません。それぞれ利用者さんの顔を思い浮かべながら、この大きさで咀しゃく、嚥下できるか検討し、調理員に小さく切ったり、刻んだりの作業を頼みます。逆に細かくし過ぎると利用者の咀しゃく力がそがれますから、加減は難しいそうです。

 最近、塩こうじの調理にも挑戦しています。こうじは血圧を下げ、コレステロールを抑えて生活習慣病を予防する、脳を活性化して認知症を予防する、心身の疲労を回復、免疫力をアップするなど高齢者向けの健康食品として昨今、脚光を浴びています。先だっては「鶏の塩こうじ焼き」を作りました。味は上出来でしたが、調味料が塩こうじだけですから白っぽく焼き上がり、焼き目がうまく付かない欠点がありました。そこでしょう油を少し加えると、見た目が美しく仕上がりました。献立のヒントはまだ続きます。焼き上がって5分ほど冷ますことです。焼き上がって直ぐ切ると、身がボロボロに崩れ、盛り付けが汚くなるからです。

 努力をしていても恐れ入ることがあるそうです。利用者60人の目です。甘いも酸いもかみ分ける人生経験豊かな世代ですから、観察眼も鋭いものがあります。ある時調理台の清掃に励んでいると、食堂から厨房をのぞいている利用者さんが「いつもきれいにしているね。気持ちが良い」と声掛けをしたそうです。嬉しい、と思いながらも「厨房まで観察されているのか」と身が引き締まったと言います。

 「利用者にとって出される料理はおいしいか、まずいか。利用者と調理員との闘い」との言葉を聞きます。この闘魂を持つ調理員がいること、それだけでも利用者は幸せかもしれません。

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