高知新聞社会福祉事業団 軽費老人ホームA型 軽費老人ホームA型 あかねの里

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掲載日:2018年1月29日

「悟りを開いたら退所です」

 「ボケてしまったらここを出される?」「身の周りのことができなくなったらどこの施設に行ったらいい?」「ここにおられなくなったら次の施設を世話してくれる?」。利用者からよく出される質問や相談、お願いです。私たちの施設は自立した人の入所が主ですから、長期入院などになれば、次の入所を待っている人も考慮し早晩、退所となります。元気な利用者がそのまま退所することはまずありませんから、退所の理由はやはり疾病がほとんどです。病気となれば、ケアマネージャーがいろいろな事情や要望から次の施設、病院を探してくれています。ですから、路頭に迷うということは現状ではありません。

 ただ、軽費老人ホームだけ一つで、グループホームや介護施設など介護の必要の人の施設の運営はしていませんから、利用者にとって「病気になったら次はどこかに出なければならない」という不安は常に付きまとっているようです。軽口を飛ばし合う利用者にはオウム返しのように「長わずらいになったら出されますよ」「ボケたら出されますよ」と応えています。

 そして、「長患い」「ボケる」とは何かと会話が進みます。私たちの施設は利用者が元気を維持し、生きがいを持つことを目指しています。看護職員は高齢を起因とする高血圧や糖尿病など多くの利用者が持つ病気についてはもちろん、事故の予防、対処にも目を配っています。入浴一つ取っても、身体の急激な負担により梗塞を起こさないよう、その日の利用者の体調、脱衣室の温度管理、入浴前後の水分摂取など細かく気を配っています。計測時の血圧は平常であっても、最近、注目されている時によって急激に血圧が上がる血圧サージについても、最近ではサージ予防体操を取り入れ、朝夕や夜間の急激な体調変化がないよう努めています。

 福祉職員も負けていません。現在21のクラブ活動のせめて3つ、利用者それぞれが入るよう企てています。利用者の要望、個性を見てクラブの勧誘も、まるで大学の入学式を思わせます。クラブ開始時間の直前まで誘っています。熱心さもここまで来るといかがなものかと思えるのは、私が世話している俳句川柳クラブの日時に自らが始めたクラブをもろにぶつけてくることです。「ボッチャ」という障害者のために新しく考案されたボールゲームで、リオのパラリンピックを見たのかどうか、昨年10月くらいから始めました。これが数十年続く生け花クラブなど老舗ならまだ許されますが…。しかも、「ボッチャのほうが面白そう」と向こうになびく俳句部員もおり、担当職員もいけしゃあしゃあと「施設長もたまにはボッチャしませんか」。

 と言うことで、利用者は忙しくなかなかボケませんし、病気にもなりません。ボケるころ、病気になるころは、身も心もそれなりに老成し、人生も達観できるようになっています。ここまで話が進み、「100歳になったころあれこれと迷う自分を想像できますか」と尋ねると、「いや、そのころになるともう自然体というか、時の流れに任せられるかも」との返事です。私は「あなたはまだまだ若い。迷いが消え去るまでは修練を施設で重ねてください。悟りを開き得たら退所です」と突然、聖人君子になるのです。

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