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掲載日:2018年4月7日

救急車を呼ぶ勇気


 このひと月余りサボっていたコラムの再開です。知人からは「やめたの」と聞き合わせもありました。つたない文章でも読んでくださる方がいる、読むのを楽しみにしている人がいるとうれしくなりました。そして手を抜いていたことを恐縮しました。実は2月中旬に目の手術をして1週間ばかり入院、出勤できたと喜んでいたところ交通事故に遭い、1か月ほどの入院となりました。

 病院生活ではいろいろ学ぶこともありましたので、参考になればと幾つか記します。利用者が長い間入院していますと、心身の機能が低下し認知症を催すのではとしばしば心配になります。高齢者施設を預かり、日ごろ見聞きしたことからの実感です。私も合わせて5週間の入院でしたから、リハビリに加え自らもベッドでの体操に励んでいましたが、体は少なからずなまったようでした。退院翌日に出勤、仕事を1日終えた夜は足がはれていました。長い間、横になっていたままの足が日常生活の開始で突然下になった訳ですから、血流がまだスムーズでなく血液など体液が下肢の方に下がったようです。宇宙飛行士が地球帰還後の体の不調は聞いていたのですが、私たちの生活でもあるのですね。幸いに、そのようなことを知っていた利用者が翌日には程よい高さの足載せを作ってくださいました。本当に感謝です。

 お見舞いに来てくれた友人、知人からは「この際、ゆっくりしたら」とか「今まで忙しかったから退屈じゃない」などと言われ、病院のスタッフからは「頭の体操」も勧められました。痛みが取れ始め、病院生活に慣れ、退屈を感じるようになったころでした。それとともに、妻や施設からの電話に理解できず、後で自分をとりつくろうことがあり、頭の巡りが鈍くなったと感じたころでした。気分転換も兼ねて、ベッドにパソコンを持ち込んで文章を書き、鉛筆と病院で購読していた新聞のチラシを利用し2桁の掛け算に取り組みました。時間を得られると、そんなたわいのないことでも高みを目指すものです。文章は、作文について日ごろ考えていることをまとめたものですが、少しずつ増え続け最後は8600字、私にとっては大論文になりました。2桁同士の掛け算はどんなものでも10秒程度でクリア、43×43など同じ数の掛け算は暗算でできるようになりました。

 ひとつだけ後悔しています。事故に遭ったときに救急車を呼ぶ勇気です。病気でもけがでも、人は大仰に考えたくないものだと考えます。頭も胸も腹も腰もけがをしていません。自動車が右足に当たったくらいの感じでしたから、救急車の話もありましたが、サイレンを鳴らしながら駆けつけるイメージを思い浮かべ、「それには及ばない」と車の方に伝えました。それで近くの医院で治療してもらい、打撲とのことでそのまま仕事に就きました。歩くと足に痛みが走りましたが、「職場の長たる者が」とのプライドが支えでした。夜、帰ってから痛みがひどくなり、翌日、MRI検査の結果、右足の半月板とじん帯に損傷が見つかりました。自分が加害者であれ、被害者であれ、まずは総合的な検査、診察を受けられるよう救急病院に行くことが大切かと思います。後から後遺症が出るようになると加害者、被害者ともに不幸になります。救急病院に搬送してくれる救急車にお世話になることです、「恥ずかしい」などとのプライドを捨てて。

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